家に入って、そそくさとクツを脱いだ。
片方は、ひっくり返った状態で、玄関に転がる。
ドスドスドス。グチョグチョグチョ。
ちょっと湿った靴下の感触が、気持ち悪い。
雨にぬれたので、軽くシャワーを浴びて、
夕食を済ませた。
部屋に戻り、バタンと戸を閉めた。
ハァ〜・・・。
大きなため息。
(あ〜あ〜、せっかくの誕生日なのに、気分が重い・・・)
(これも、あの女と、あの軽い男のせいだ・・・)
一瞬でも、恋愛に発展するという甘い期待を思ったことが、腹立たしい。
『しかし!アイツは、なんだんだ!
すげームカつくし!!』
『誰が、カナコ似だっつぅーの
ぜんぜん、にてねーし』
『今もまだ、みんなは、楽しくやってるのかなぁ〜』
『せっかく、誕生日を祝って集まってくれたのにぃ
悪いことしたかなぁ〜。
今晩で気分をすっきりさせて、明日には笑って逢おう』
今日の大人げなかった態度に少し反省をした。
ハァ〜。
自然に、もれるため息。
『でも、あの人、本当にキレイだった』
『私が、もう少し痩せていれば、アイツも・・・』
頭を激しく、横に振った・・・。
(ダメダメ。
もう、あのボケのことを考えるのはよそう・・・)
(顔が良かっただけで、性格は最低だったしね・・・)
部屋の中を、グルグルと回りながら考えた。
『私って、太ってるの?』
確かに、彼女と比べると、かなり見劣りをする私。
彼女は、元がキレイな上に、上手に着飾っている。
読者モデルだし、センスもいい。
(私だって・・・負けないところもあるはず・・・)
考えれば、考えるほど、気分がめいってくる。
『ダメだダメだ。
こんなことだと、気分が切り替わらないよぉ』
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